ツールごとの適材適所の使い分けであったり、Obsidian が AI readable なだけでなく使う側にとっても膨大な情報へのアクセス容易性を担保してくれそうで興味深く(MOSA2025:夏のTech Dive! Follow WWDC25 で拝聴した Claude Code 開発のトークでも、フォルダ区切って情報管理をしていたことを思い出した)、Figma Make の活用も実務応用を検討したいと思った。
バルミューダにジョナサン・アイブデザインのランタンを見に行った話を書いたが、同日 Apple 表参道にも寄っていた。目的は、M5 搭載 Vision Pro のデモセッションだった。しかし筆者はすでに初代 Vision Pro を持っていて、M5 へのアップデートだけで買い換えるつもりはない。デモの目当ては Vision Pro 本体ではなく、同時に新登場した Dual Knit Band の装着感を確かめることだった。
Apple Vision Pro と Dual Knit Band
筆者は普段、3rd-party のヘッドサポーターを使っている。Vision Pro はその重量と装着不可に悪名高く、人によって合う合わないはあるようだが、多くのユーザーにとっては長時間使用に耐えられないのが現状だ。そこで、こうしたヘッドストラップやサポーターが販売されているわけだが、どれも共通して頭部上部から本体を支えることで、頭部に掛かる負荷を分散させる効果がある。
ヘッドサポーター付き Vision Pro と Solo Knit Band(新幹線での移動中にて)
加えて、このヘッドバンドは Vision Pro 使用時の負荷要因のもうひとつを取り除いてくれる。顔面圧だ。例えば筆者の場合だが、初代に同梱されていた Solo Knit Band 単体では 30分 の継続使用が限界なのだが、それは本体重量に加えて、視界を覆うライトシーリングにより顔面に掛かる圧にも起因すると考えている。この圧が次第に痛みを伴いだし 30分を過ぎれば額に手脚に脂汗が滲むほどで、到底無視できないのだ(映画1本観るのに4、5回の休憩が必要と言えば分かりやすいだろう)。
筆者の使っているサポーターは角度を自由に変えることが可能で、支点を頭頂部よりも前倒し額上部に調整することで、Vision Pro 本体を顔面から離すことができる。これにより前述の顔面圧が緩和し、何時間でも継続使用できるようになった。またサポーターの安定性が抜群なので、視界を覆うライトシーリングすらも外すことができ、ヘッドセットならではの没入感とは引き換えになるが、視界の広さとカジュアルな使い勝手をも実現してくれる。Mac からデスクトップミラーリングすれば、普段の作業スペースが日常空間と連続して存在しているかのように感じられる(と、長々講釈を垂れたが、このヘッドサポーターやその効能はすべて MESON 代表の小林さんに教えてもらったものだ)。
とはいえこの課題を Apple は当然はじめから認識していて、初代 Vision Pro には Solo Loop Band に加え Dual Loop Band というバンドも同梱されていた。後頭部と頭上部の2箇所で本体を支える、要するにヘッドストラップ一体型として上述の問題を解決しているが、着脱が面倒そうなのと、何より Solo Knit Band のアイコニックなデザイン性を失いたくなかったので、選択肢にはならなかった。
が、件の Dual Knit Band はサポート性とデザイン性の両方を兼ね揃えて登場したのだから、新型に一切関心のなかった筆者の心を揺さぶった。一方で 16,800円(2025/11時点) というお値段では容易く手を出せない。というわけで、デモセッションで実際に試してみようと思い立ったわけだ。
Vision Pro 登場と同時に一部のアップルストアに新設され話題となった、革張りソファー付きのセッションエリアは、国内では表参道・丸の内・心斎橋の3店舗のみ。それ以外の店舗でもデモ自体は提供しているのだが、せっかくだからこのソファに座ってみたいと、最寄り店ではなくあえて表参道を選んだ。このラグジュアリなエリアにはじめて足を踏み入れたとき、反射的に靴を脱がなくて良いのか不安がよぎったのは、ここだけ床がふかふかなカーペットになっていたからだった(もちろん脱ぐ必要はなかった)。
メガネユーザーの筆者は、普段 Vision Pro を使う際はメガネを外し、専用のインサートレンズを代わりに使っている。このインサートレンズは Vision Pro の注文プロセスで 、メガネレンズの処方箋に倣い値を入力することで、本体と同時注文できる流れになっている。それが今回デモセッションを予約するにあたっては入力手段が見当たらず、現地でどう手配するのか気になっていた。その答えはエリア隅に置かれた謎の機器にあった。てっきり手指消毒用の設備だと思い気にも留めていなかったのだが、筆者が手渡したメガネを担当スタッフがここにスキャンさせることで、あっという間にインサートレンズのスペックが確定したようだった。
赤丸部分の、手指消毒ができそうな機器
しばらくすると、木製のお盆に乗せられた Vision Pro が運ばれてきて、手や視線のキャリブレーションを済ませ、すぐにデモ体験を始められる状態となった。事前にスタッフには、筆者が Vision Pro ホルダーであること、今回の目的はバンドの使い勝手であることを伝えていたので、インストラクションなどを省き残り時間好き勝手に使わせてもらうことができた(質問には適宜お答えくださった)。
M5 搭載 Vision Pro のファーストインプレッションだが、手に取った瞬間、重いなと感じた。これはすでに、前モデルから総重量が 150g 増加していること、その増加分は Dual Knit Band によるものであること、が情報として明らかにされていたのだが、果たしてバンドだけで 150g も増加するだろうか?と不思議に思っていたのだった。しかし手に取ると確かに、後頭部分の重みが顕著だった。加えて Solo~ ではしなやかな手触り感だった生地も、一変ゴツく感じられた。これは従来になかったタングステンの編み込みによるもので、スタッフによると装着時の安定性向上に寄与しているそうだ。何かで読んだ情報によると、この重さが本体重量に対するカウンターウェイトとしても機能しているらしい。
実際に使ってみての感想だが、頭部上部からも支えることで確かに Solo Knit Band と比較して負荷は軽減されたものの、前述したヘッドサポーターの機能性を求めるには不十分だった。頭部上部・後頭部を支える角度が物理的に固定している作り上、額側に支店を調整できないため、ライトシーリングを外すとどうしてもグラつくのだった。(というか Apple がそもそも意図していない使い方なので、完全に言いがかりなのだが)。
あと、Solo Knit Band のしなやかな触り心地も気に入っていたので、Dual Knit Band の硬さ・重厚感はなんだか違うなあ、、とも思った。これは手に取らなければ分からなかった。
というわけで、セッションの時間だけだは Dual Knit Band を買う決断には至らなかった。一方で今愛用しているヘッドサポーターも、3Dプリンタで出力したような安っぽい作りなので、いつ壊れるかは分からないし同じものは終売しているので、壊れたときはまた考える必要がありそうだ。
ちなみに余談だが、M5 搭載の Vision Pro で、デモでおなじみ「恐竜たちとの遭遇」を試した際やたらと視界がクリアに感じて驚いた。しかしスペック上画面解像度は変わっていないはずだ。処理能力とともにFPSが向上したからだろうか、と考えたが、あとから思うに、店頭でスキャンしてもらったインサートレンズが今の視力に合っていて(最近メガネを作り直した)、シンプルに「よく視えた」だけだったのかもしれない。
他にもこのプロダクトに込められた工夫や秘密はたくさん。素材の特性をふんだんに活かし、継ぎ目もネジもどこにもない視覚的な意匠はもちろん健在だ。調光つまみを入切した際の、指先に伝わる手応えや、調光カーブの繊細さも、言葉や画像だけでは伝わらない。外箱も見せていただいたが、まるで高級ウイスキーのケースのようだった。 Jonathan Ive 時代のアップルプロダクトがお好きな方は、これを機会に一見の価値は間違いなくあり。もちろん、見ずに買うもよし。