Apple 専門誌 Mac Fan が、2026年5月号をもって定期刊行を終えることになった。その最終号の発売日を迎え、Amazon で予約購入していたものが手元に届いた。

筆者は Mac Fan との思い出が深く、その根源は10代の頃に遡る。というか、そもそも父の影響で幼少から Apple 製品に親しんでいたので、中高時代から必然的に Apple 専門誌に手を伸ばすようになった。当時は Mac Fan の他に MacPeople も刊行していて(確か MACPOWER は休刊中だったはずだ)、書店で Mac Fan はほぼ毎月購入し、MacPeople は内容によっては一緒に買う、みたいな感じだったと記憶している。
なので、もっとも古くは2004、5年くらいから愛読していたはずだが、2006年からだったかもしれない。その記憶が定かでないのは、せっせと買い集めた膨大な雑誌が、今まったく手元にないからだ。
当時の Mac Fan で特に思い出深いのは、雑誌の後ろの方に毎号、Mac のシェア率を掲載していたことだ。今となっては信じがたいが、その頃 Windows 主流の世の中では Apple や Mac の存在感は圧倒的マイナーで、当時 Apple 信者たちはそんな数値の増減を見ては一喜一憂?していたのである。
漫画も楽しみのひとつだった。鈴木みそさんの『Xてんまでとどけ』や、『Mac不安ちゃん』。読者コーナーも面白かった。中身を振り返れるとしたら、まっさきに開きたいのは、カラーの特集よりもこのモノクロの見開きかもしれない。
大学に進学ししばらくして筆者が始めたのが、Apple 関連のニュースを配信するブログだった。Mac Fan と同様に、高校時代から愛読していた藤シローさんの maclalala に憧れていたからだが、藤シローさんがそうしていたように、海外から記事を引用し原文+和訳付きで紹介するスタイルをそのまま踏襲した。
そんな『うま口Mac。』は、ありがたいことに度々注目をいただけ、開始後半年の間にぐんぐんとビュー数を伸ばしていった。(その背後には他でもない前述の藤シローさんが、ご自身のブログの中で度々「うま口Mac。」を紹介くださったことがあった。大の憧れであった藤シローさんからはじめてピンバックされた時は、文字通り「身が震える」ほど感激したのは言うまでもない)
その頃はブログ全盛期、Apple 界隈でも数多のブログが運営されており、その影響力を示すいくつかの指標があった。中でも影響力のあるブログは、その最新記事が「Apple-Style」というポータルサイトに日々ピックアップされていた。当時 Apple 系ブロガーの誰しもが、ここに自身のブログ記事が掲載されることを夢見ていたのではないだろうか?(そして毎朝チェックしていたのではないだろうか?笑)
そしてもうひとつ、Apple 系ブロガーたちにとっての「登竜門」だったのが、Mac Fan の読者コーナー『読者厚誼』の一角『Macなブロガーの素顔』であった。その名の通り、毎月ひとつの Apple 系ブログをピックアップし、管理人のコメントを掲載するものだ。毎号 Mac Fan を開いては、今月はこのブログか!こんな方が書かれているのか!なるほど!などと感心するとともに、羨望、時には嫉妬も向けていたはずだ笑
そんなある時、唐突に「Mac Fan」を名乗る人物から一通のメールが届いたのだった。

あまりの衝撃でか、正直いつどんな状態でこのメールを開いたのか、どんな感情だったのか、何も記憶していない笑 しかしその当時の興奮は幸いにも言葉として残っていた(読み返すのも恥ずかしい笑)。
しかしその後、このブログは長くは続かなかった。ちょうどこの頃に学業やバイトが忙しくなり始め、10万PVという大台を境にしてブログからは遠ざかっていったのだった。
いや、そう言えばもっともらしいのだが、「燃え尽きた」と呼ぶ方がふさわしいかもしれない。なにしろ、当時の1記事1記事に込めるエネルギーは半端ではなかった。「国内で誰も取り上げていない話題を正確に日本語訳して記事にすること」を使命に背負い、興味深い記事を海外メディア(MacRumors, AppleInsider, Cult of Mac…)から「発掘」すると、ある時は徹夜で翻訳・推敲し、ある時は二日三日かけて複数媒体を跨ぎ「裏取り」をし、時にはどんなに時間をかけたトピックでも他所のブログが先に取り上げれば「お蔵入り」させたりと、偏執的に入れ込んでいたのだから、専業でもない限りいつまでも続くわけがなかったのだ。
今振り返ると、Twitter に端を発するソーシャルメディアの勃興前夜で、情報の拡散スピードは今とは比較にならないくらい穏やかだったからこそ、ある意味で牧歌的にブログ活動に打ち込めたとも言える。
その後、無事に大学を卒業し、東京で就職することになったのだが、百を超える雑誌(Mac People も含めると相当な量だった)を携えて上京するわけにはいかないし、すべてを残すための場所もないため、泣く泣く厳選した一部を実家に送りつけた記憶がある。掘り返せば、きっとまだどこかに眠っているはずだ。
2010年に MACPOWER が休刊し、2014年に MacPeople が休刊した。そんな世の中の「脱雑誌」に抗いながら、加えて10年以上にもわたり Apple の歴史を刻み続けてきたMac Fan。これが日本、世界の Apple カルチャーにとってどんなに偉業だったろうか? 筆者は今回のマイルストーンを「残念」と表現する代わりに、この偉業が必ずのちの世の中で再評価されることを信じている。