ユリイカ2025年12月臨時増刊号 総特集=大貫妙子

先日、昭和女子大学 人見記念講堂で行われた「大貫妙子 コンサート 2025 【Celebrating 50 Years】」にて、青葉市子との共演時だったと思うが、「ユリイカ」の増刊号で大貫妙子特集をしていると、それが発売されると、トーク内で宣伝があった。

青土社 ||ユリイカ:ユリイカ2025年12月臨時増刊号 総特集=大貫妙子

大貫妙子は10年以上前から、毎年追いかけしているくらいにはファンだし、CDもすべて持っているが、書籍にまではアンテナを張っておらず、このことも知らなかった。しかし50周年の記念に買っておくか、、とコンサート後に予約注文し、それが先週届いていた。

そもそもユリイカという雑誌を知らず、いちセクションで特集されるんだろうか、程度で想定していた。しかし届いてみるとそれは雑誌ほどの大判ではなく旅行ガイドブック程度のサイズで拍子抜けした。さらに230頁もあるそれは、手に取ると分厚くずっしりと重量がある。この隅から隅までが「大貫妙子特集」なのだと気がついて驚いた。前述青葉さんとの対談を含め、総勢26名の、大貫さんとゆかりある関係者・著名人がエッセイを寄せている。

表紙や裏表紙には金の箔押しのような印刷が施されていて手が込んでいるし、見返しも凝った作りになっている。


筆者は先週末、長野県野辺山に泊まりで出かけた。愛用のウォークマンに大貫妙子作品をすべて入れているのだが、そのウォークマンと、このユリイカだけを娯楽に携えた。

軽い気持ちで手にしたこのユリイカが、読み進めれば進めるほどに、大なり小なり大貫妙子ファンを自称する方すべてにとっての必読書であるという確信を深めている。

大貫妙子の、デビュー前から今に至るまで、寄稿者それぞれの持つエピソードから、音楽家としての苦悩や、音楽との向き合い方を紐解く。あるいは1曲1曲取り上げて、彼女の詩世界やアレンジの特色を分析するコラムもあれば、「シティポップ」の再評価へと踏み込む難解な解釈も、、とにかく、その切り口の多様さ驚く。まるで万華鏡越しに彼女の音楽人生を俯瞰しているようだ。

また、それぞれのコラムもただ、たとえば単純に「あいうえお順」や「大物順」に並べてあるのではない(先頭が山下達郎なのは納得)。エッセイに登場するエピソードや作品同士がまるで数珠つなぎのように、以降のエッセイにバトンタッチするよう注意深く配置されているように思える。そのお陰で、50年という時間軸がすっと頭に入ってくるのだ。

車窓を流れる晴れ渡った長野の風景を脇に、ページをめくりながらその時々に登場する曲をウォークマンで再生する。ただそれだけの手順の中に、これまで親しみ尽くした音楽を、再び噛み締めるように味わえている実感があり、旅路はこの上なく贅沢な時間であった。

宿の猫