インクルーシブデザインの中でも障害(disability)に焦点を当てたセッション。インクルーシブデザインやアクセシビリティデザインの文脈において、身体的に永続的な障害に目が向けられがちだが、環境要因で誰しもその状態に当てはまりうることは常々意識したい。またインクルージョンへの考慮は果てしないものだと思っていたが、現状理解と計画を持って解決していくこと、ギャップをイノベーションの機会と捉え取り組むことというメッセージに心に火がついた。
0:00 – Introduction
- アクセシビリティデザイナーによる、障害を持つ人々を含むインクルーシブなアプリデザインについて紹介
- 世界の約 7 人に 1 人が何らかの障害を持っており、障害は人間の普遍的な部分
- 障害をデザインに含めることで、より多くの人々にアプリを提供し、創造性も向上
- インクルーシブデザインにはアプリ多言語の翻訳、人種、民族への影響への配慮、世界中の文化の包摂などの観点もあるが、今回は障害に絞る
- 大音響後の一時的難聴、大声の会話ができない、多言語環境に身を置くといった環境的要因で障害を経験することもある
- Vision, Hearing, Motor, Speech, Cognitive の 5 つのカテゴリで障害を考える
- 障害の有無は全か無かだけでなく、その間の「いくらか」の程度が存在する
3:55 – The inclusion gap
- 障害は身体や心の特性ではなく、環境に大きく依存
- 社会が期待することと個人が実際にできることの間にギャップが生じる
- 生まれて死ぬまでの能力の曲線は人により様々
- この「インクルージョンギャップ」が障害を生み出す
- 人のできることは、環境のデザイン、構築により左右される→「できる力」を与えるモノ作り
- エレベーター、マイク、メガネ、curb cuts など、多くのイノベーションがこのギャップから生まれた
- 「Nothing about us without us(私たちのことを私たち抜きに決めないで)」の原則で、障害を持つ人々を意思決定に参加させる重要性
- アプリをよりインクルーシブにするための4つの実践を紹介
8:55 – Support multiple senses(複数の感覚に配慮する)
- 複数の感覚を通じてアプリとインタラクションできる方法を提供
- 動画のキャプション、視覚的な情報、音声での体験など、様々な方法で情報にアクセス可能に
- 情報の取得方法、入力方法を多様化(視覚、聴覚、触覚、声、認知能力)することが、インクルージョンギャップを埋める第一歩
- Accessibility Reader の例:視覚的テキスト、音声読み上げ、ハイライト付き読み上げの 3 つの方法
- Crouton アプリの例:画像、カメラ、テキスト、Hands Free モードなど多様な入力方法
12:36 – Provide customization(カスタマイズ性を持たせる)
- UI とインタラクションを個人のニーズに合わせてカスタマイズ可能に
- Accessibility Reader の例:テキストサイズ、色、フォント、音声設定の調整
- Carrot Weather の例:データ豊富なレイアウトからシンプルなインターフェースまでカスタマイズ可能
- アプリが人に適応するのではなく、人がアプリに適応することを期待しない
14:27 – Adopt Accessibility API(Accessiblity API を採用する)
- アシスティブテクノロジーと連携するために Accessibility API を採用
- VoiceOver, Switch Control, Voice Control, Larger Text などの機能をサポート
- Accessibility API により、開発者が独自に実装することなく、障害者インクルージョンを簡単にサポート
- アクセシビリティリーダー:Accessibility API を統合、スイッチコントロールにより画面に触れずに操作可能(iPhone とペアリング可能な物理ボタンにアクション割り当て)
- Blackbox ゲームの例:オーディオや触覚デザインに加えて VoiceOver API で視覚障害者もパズルを解けるように設計
18:46 – Track inclusion debt
- インクルージョンは旅であり、一度限りのものではない
- inclusion debt(インクルージョン不足)を認識し、計画を立てて意識的な決定を行う
- アプリに存在するギャップを理解し、障害を持つ人々と協力してギャップを埋める
- インクルージョンギャップは創造性とイノベーションの機会
- App Store でアプリのアクセシビリティをハイライトすることで、ユーザーが重要な機能をサポートしているかを知ることができる