空間コンテンツをテーマに映像作家と開発とが一堂に会するイベント(実は参加者要件を深く知らずにエントリーしたため、映像系の参加者が多かったことには驚いた)。空間コンテンツの制作にあたって、映像作家、アプリ企画開発の両観点から工夫に共通点が多くあった点が印象的だった。実は以前参加した「Apple Vision Proホルダー限定Meetup」でも、とある映像クリエイターの方とお話しする機会があり、今回の映像x開発の組み合わせは自然と腑に落ちた。懇親会では360度VRの映像制作を専門とする方に、180度/360度映像の制作における表現手法の違いや難しさについて教えていただき学びになった。
本編で紹介された大型XRエンタメ施設「IMMERSIVE JOURNEY」(横浜)はぜひ行きたいと思っている。
イベントページ:https://vook.vc/n/7829
イマーシブビデオの演出について:「Submerged」「ザ・ウィークエンド:Open Hearts」を体験して
VR Director / Creative Director 渡邊 徹さん(Concent, Inc.)
- XR映画においては、体験の前後(観る前と観た後)設計が重要と言われる
- VR=仮想現実は誤訳:Realityを「virtual(実質上)」にどう再現するか
- Vision Pro イマーシブビデオに必要な要件:VR180フォーマット
- 視聴者は基本前だけ見ているため180°、フロントだけだと破綻なく作りやすい
- 視野角100°でその場にいると脳が錯覚、人間の視野角は200°近く、頭を振ることで追従可能
- コンテンツと体験者との双方向性が没入感を高める(e.g. 対象を目で追う、ナビゲータによる誘導など)
- framedされた映像と異なり、視覚をジャックすることで、追体験、自分ごと化させられるのがVRの強み(体験をデリバリする)
- 体験コンテンツではユーザーを能動的にする必要がある
- そのための「感情移入のレイヤー」プロセス(自己の投影→状況→環境→感情)
- ユーザーにルールとミッションを与えることが重要
- 没入の状態にどう誘うか
- Apple のイマーシブビデオ(Submerged / Open Hearts)について
- ワンカット・ワンカットは素晴らしい
- カットが多く「そこにいる感」が損なわれる
- 途中途中で人のドアップが入る、誰の視点で見ているかがわからない
- 「感情移入のレイヤー」に従っていない
質疑応答
- 勘違いさせる or not で Apple とは作る哲学が違うのでは?
- 1個1個のカットをもう少し活かせたのでは
- 日常その場にいる感覚を作った上で、体験したことのない世界に連れていく土台を作れたのではないか
- Appleもリサーチの上でたどり着いたと思うが、完全1人称視点の映画にしなかったのは、カットの完成度を優先したのではないか?
- VRはその場にいる感・臨場感を作って面白い世界に連れていく体験を丁寧に作りたい自身の主義に合わなかった
- カットが多いことでユーザーが迷子になるのではと思った(一方でパルクールはうまくやっていた)
- 制作上Vision Proだから気にしているポイント
- 解像度の高さからありありとその場に連れていける
- 映っていない闇が空間になるかが重要:光に対しての影の部分空間として見えるのは高解像度感ならでは
- そのために丁寧なノイズリダクションなどが重要になる
「サウナアプリの体験と演出と技術」の話
AI事業本部 AIクリエイティブディビジョン 岩崎謙汰さん/XRエンジニア 伏木 秀樹さん(株式会社サイバーエージェント)
没入感を下げない!空間体験の演出工夫5選
- 追いととのうプロジェクト
- カプセルホテルという狭い空間+空間コンピューティングの相性
- 寝ながら体験、尺5分
- コンテンツによっては長いと感じられるが、絶妙な尺で満足度が高かった。その中で得た学びについて
- 没入感を下げない工夫
- 1. シームレスなイマーシブ遷移
- いきなりフルイマーシブでなく現実から徐々に
- 2. 目線の安定
- 目線を迷子にさせず無意識に誘導する
- 3. 身体性による能動参加
- 受動だけでなく「口から泡」といった演出
- 4. アテンドレスな体験設計
- アテンド役の経験値に依存せず100%体験できるように
- アプリ側が誘導する、リセット操作やキャリブレーションを省略するなど
- 5. 装着までの気遣い
- 不織布アイマスクNGの仮説→クッションを買い揃える
- メガネユーザーへの配慮
- メイクや髪型崩れへの配慮
- 1. シームレスなイマーシブ遷移
サウナ追い整いアプリの演出の開発における課題と実現方法
- Xcode + Unity
- Unityの強み
- 既存アセットの活用
- タイムラインが使え、映像業界との親和性が高い(After Effects)
- Unity Poly Spatialは制約が多かった
- Unity → Xcode → Vision Pro を経由した開発検証は時間がかかる
- Unity / Vision Pro で挙動が違うこともある
- そこで、visionOS シミュレータと Unity とをリアルタイムに接続する「Play to Device」を活用した(画面反映に実行時ビルドが不要)
- ポータル表現や Plexus 表現、魚群シミュレーションの実現方法
- 開発とアートディレクターの寄り沿いが大事
- Vision Pro で何ができるか、開発側から最初に提案するのが大事
- 技術的制約を言われるとアートディレクターの思考停止を招きがち
- ディレクターの立場から代替案や排除案を言ってもらえると良い
- Vision Pro で何ができるか、開発側から最初に提案するのが大事